
社会福祉法人が生き残るために!介護報酬改定で見えてくるもの

2018年1月に明らかになった介護報酬改定の内容は、多方面に波紋を広げています。全体的にみれば改定率は+0.54%とアップしたものの、収支差率の高い通所介護や訪問介護で基本報酬が引き下げられるなど減算が目立ち、特に大規模施設にとっては厳しい内容になっています。2017年には社会福祉法の大幅改正が実施されたばかりであり、その対応も急務です。介護事業に関わる人や開業の予定がある人にとって、「介護事業がどこに向かっているのか」を押さえておくことは非常に重要です。2018年の介護報酬改定から、どんな方向性が見えてくるのでしょうか。
介護報酬改定はどのような方向性?
2018年の介護報酬改定では4つの柱が設けられましたが、なかでも「自立支援・重度化防止」が最大の目玉になっています。全体的に、症状悪化の防止と自立を目的とした「機能訓練」が重要視されており、これに対応できる事業所が加算を得られる一方で、基本報酬そのものが下がる分野も少なくありません。特に収支差率が高い「通所介護」と「訪問介護」に大ナタが振るわれた形です。
この2つの分野について、さらに詳しく見ていきましょう。まず「訪問介護」についてですが、身体介護型サービスの基本報酬がアップした一方で、生活援助型では減額となりました。生活援助型サービスの利用回数に上限が設けられたことも大きなポイントです。回数が基準を上回る場合、ケアマネジャーが市町村にケアプランを提出する必要があります。また、医療機関との連携がこれまで以上に重視され、事務所と医療機関の情報連携が義務化されています。同じく訪問介護分野の「訪問リハビリ」では、アウトカム(成果)評価制度の導入が決まりました。今後は、単にリハビリを実施したかどうかではなく、その結果が問われることになったのです。
一方、「通所介護」では、収支差率が高い大規模施設の基本報酬が減算のターゲットになり、同じく「通所リハビリ」でも、基本報酬がマイナス修正されました。これまで2時間ごとに設定されていたサービス提供時間が、1時間ごとに見直されたため、より緻密な時間管理とサービス提供が求められます。こちらの分野にもアウトカム評価制度が導入されたため、今後は外部リハビリ職との連携が課題になってきます。そもそも、国は小規模多機能型居宅介護の普及を図りたい考えで、大規模施設によって介護事業がスポット化し、地域に広がらない状況を懸念しています。また、有料老人ホームなどで行われている過剰なサービスが財政を圧迫しているとして、規制を強める方針です。いずれの分野でも生活援助型サービスの縮小は避けられないでしょう。
多くのサービスがマイナスになる可能性大?
2018年の介護報酬改定では、自立や重症化の防止にスポットが当てられたため、生活援助型のサービスを提供している事業者にとっては厳しい内容になっています。その特徴は、ベースとなる基本報酬を低く抑えて、国が求める介護サービスを導入できた事業所に対してのみ加算を認めるところにあります。そのため、より誠実に事業に取り組んでいく姿勢が求められるでしょう。特に、アウトカム評価制度が導入されると、成果なしには報酬につながりません。加算の認定もシビアになるため、弱小事業所にとっては死活問題になる可能性もあります。本改定で新設された制度としては、「看取り介護加算」や「ターミナルケアマネジメント加算」、「認知症専門ケア加算」などがあり、介護ロボットの導入による優遇措置も設けられました。
しかし、いずれも高度なスキルや知識が必要で、ハードルは高めです。こうした新制度に対応して介護報酬を確保することは、弱小事業所にとって簡単ではないでしょう。これまで介護事業の分野では、介護報酬目当ての軽い気持ちで事業に乗り出す事例も少なくありませんでした。高齢化が進むなか、受け皿となる介護事業施設の充実は待ったなしとはいえ、質の低い施設の増加は懸念材料です。虐待事件や死亡事故が報告され、利用者の不安も広がっています。介護報酬改定は、ここに一定の歯止めをかけるでしょうが、少なくない事業所で報酬がマイナスとなり、経営難に陥ることも予想されます。本改定を事業所のあり方を見直すきっかけととらえ、改善すべき問題があれば積極的に取り組むことが重要です。
内部留保はマイナス要因に!社会福祉法人の健全な経営に必要なこと
2017年の社会福祉法の改正によって、非営利組織としての社会福祉法人のあり方が改めて問われることになりました。その結果、内部留保を抱えることが難しくなり、隠し持っていればマイナス要因となることは避けられません。内部留保とは、「純資産額」から「経営の継続に必要な財産額」を差し引いた「社会福祉充実残額」を指します。社会福祉法人の抱える内部留保の不透明さは、長く問題視されてきました。
本改正では、社会福祉法人の定款や役員報酬基準、賃借対照表などを、ホームページで公表することを義務づけています。また、内部留保を保持する事業者は、新規公益事業・福祉事業計画書を作成する必要が出てきたのです。さらに、経営組織ガバナンス強化により、理事会と監事、評議員会を設置する規制が設けられました。家族だけで理事と評議員を兼務するなどの緩い組織は、今後一切認められません。行政の関与も強化されています。行政側が必要に応じて財務状況や業務内容について報告を求めたり、施設の立ち入り検査を実施したりできるようになったことは、介護事業所運営のハードルを押し上げています。問題が指摘されて勧告に従わなければ公表されるおそれがあります。この他、会計監査人の設置が義務化されたことや、責任の明確化が行われたことで、違反すれば罪に問われる可能性すら出てきました。そのため、法に則った健全な経営をすることが非常に重要になっています。
介護事業所を運営している人や開業予定のある人は、社会福祉法の改正ポイントをしっかり把握し、早急に対処する必要があります。個人での対処が難しい場合は、弁護士などに相談するのも1つの方法です。内部留保に、ますます厳しい監視の目が向けられるのは必至です。公共性の高い社会福祉法人としての基本に立ち返ることが求められているのです。
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