
福祉用具の貸与・販売の選択制とは?対象となる種類や必要な対応について解説

2024年の介護報酬改定に伴い、福祉用具における貸与・販売の選択制が導入されました。新たな制度では、介護サービスの利用者の意思決定に基づき、福祉用具の貸与または販売を選択できるようになります。
介護現場でどのような対応が必要になるのか、心配な方もいるでしょう。そこでこの記事では、選択制の対象となる福祉用具や、ケアマネジャー(介護支援専門員)などに求められる対応について紹介します。
・2024年4月1日から、福祉用具の貸与・販売の選択制が導入された
・選択制の対象となるのは、固定用スロープ、歩行器、単点杖、多点杖の4種類
・ケアマネジャーは医師や専門職の意見に基づき、利用者に情報提供を行う必要がある
2024年から始まる福祉用具の貸与・販売の選択制とは?
2024年の介護報酬改定では、「地域包括ケアシステムの深化・推進」や「自立支援・重度化防止に向けた対応」などを目的とし、介護保険制度の見直しが行われました。そうした改正内容の一つが、福祉用具の貸与・販売の選択制の導入です。
介護保険制度において、福祉用具は“利用者がその居宅において自立した日常生活を営むことができるよう助けるもの”に限り、保険給付の対象となっています。しかし、福祉用具は貸与を基本としており、介護サービスを利用する方の意思決定が反映されていないという問題点も指摘されてきました。
2024年4月1日から始まった福祉用具の貸与・販売の選択制では、これまで原則貸与とされていた一部の用具について、利用者が貸与または販売のいずれかを選択できるようになります。
(参考: 『令和6年度介護報酬改定の主な事項について』)
選択制の対象となる福祉用具は4種類ある
選択制の対象となるのは、これまで貸与の対象であった福祉用具のうち、下記の4種類です。
・固定用スロープ
・歩行器(歩行車を除く)
・単点杖(松葉づえを除く)
・多点杖
以下の福祉用具は選択制の対象ではないため、原則貸与となります。
・車いす(付属品含む)
・特殊寝台(付属品含む)
・床ずれ防止用具
・体位変換器
・手すり
・認知症老人徘徊感知機器
・移動用リフト(つり具の部分を除く)
・自動排泄処理装置
また腰掛便座や入浴補助用具、簡易浴槽など、貸与に適さない福祉用具(特定福祉用具)については、これまで通り販売が行われます。ただし2024年4月からは、特定福祉用具の販売後、福祉用具専門相談員※によるモニタリングやメンテナンスが義務付けられます。
※福祉用具専門相談員とは、“車椅子や特殊ベッドなどの福祉用具の貸与サービス・販売を行う事業所に勤務し、利用者や家族に対して適切な用具の選び方、使い方をアドバイスする”職業のこと。
利用者が福祉用具の貸与・販売を選ぶ流れや必要な対応
ここでは、介護サービスの利用者が、福祉用具の貸与または販売のいずれかを選択する流れを解説します。
1.利用者に対して、福祉用具の選択制の制度趣旨を説明する
2.利用者が貸与または販売のいずれかを選択する
特に介護事業所で働くケアマネジャーや運営責任者(サービス提供責任者)の方は、必要な対応について知っておきましょう。
利用者に対して、福祉用具の選択制の制度趣旨を説明する
福祉用具の選択制では、ケアマネジャー(介護支援専門員)または福祉用具専門相談員が、利用者に対し、あらかじめ制度趣旨についての説明を行う必要があります。
またサービス担当者会議において、ケアマネジャーは医師による所見などをふまえつつ、利用者の選択に必要な情報を提供しなければなりません。例えば、貸与または販売を選ぶメリット・デメリットなどです。
以下のような流れで利用者に対する説明を行いましょう。
1.ケアマネジャー・福祉用具専門相談員から利用者に対し、選択制の制度趣旨について説明
2.医師による所見の用意や、各担当者への連絡、情報収集、ケアプランの原案作成など、サービス担当者会議に向けた準備
3.医師による所見などをふまえ、利用者および各サービス担当者間で協議を行い、今後の方針を提案
サービス担当者会議における提案の例としては、「長期利用が見込まれるため販売」や「利用期間がこの段階では判断できないため貸与」といったものが考えられます。
利用者が貸与または販売のいずれかを選択する
利用者はサービス担当者会議における協議内容や提案をふまえ、貸与または販売のいずれかを選びます。
利用者が貸与を選択した場合の対応
利用者が福祉用具の貸与を選択した場合は、ケアマネジャーがケアプランの原案を作成し、貸与選択の理由を記載します。また福祉用具専門相談員が、福祉用具サービス計画をケアマネジャーに交付します。
貸与開始後は、福祉用具専門相談員によるモニタリングを受けなければなりません。モニタリングは少なくとも一度、貸与開始から6カ月以内に行う必要があります。
モニタリングでは、利用者の身体状況の変化や、福祉用具の利用状況、貸与・販売に対する意向などが報告され、その結果がモニタリングシートとしてケアマネジャーに交付されます。
利用者が販売を選択した場合の対応
利用者が福祉用具の販売を選択した場合は、福祉用具専門相談員が福祉用具サービス計画を作成し、目標達成状況の確認時期を記載します。その後、福祉用具専門相談員がメンテナンスを担当し、利用者やケアマネジャーの要望に応じて、使用状況の確認や修理、使用方法の指導などを行います。
福祉用具の販売後、他の居宅サービスがなければ、ケアマネジャーの関与は終了します。
まとめ
福祉用具の貸与・販売の選択制とは、介護サービスの利用者の意思決定に基づき、福祉用具の貸与か、販売かを決められる制度です。選択制の対象となるのは、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖の4種類の福祉用具です。
福祉用具の選択制の導入に伴い、ケアマネジャーは利用者に制度趣旨を説明し、必要な情報提供を行う義務が生じます。また福祉用具の貸与・販売のいずれかを選ぶ場合の対応方法についても知っておきましょう。
リコーリースの介護報酬・障がい福祉ファクタリングは、“負債”扱いにならずに“早期”資金調達ができる介護事業、障がい・福祉事業者向けの金融サービスです。最短5営業日で資金化も可能。サービスの詳細は下記バナーをクリックください。
けあコンシェルでは会員登録いただきますと『実践CaseStudy』や『介護Report』などの介護業界の旬な情報をご覧いただけます。
けあコンシェル会員登録をされた方は、必ず弊社サービスをお受けいただくということではございませんので、お気軽にご登録ください。
厚生労働省は、介護事業所での人件費などの経費を緊急で補助する「2024年度介護人材確保・職場環境改善等事業」のサービス類型ごとの交付率を示した。交付率は、▽訪問介護10.5%▽通所介護6.4%▽通所リハビリテーション5.5%▽小規模多機能型居宅介護8.4%▽介護福祉施設サービス8.3%▽介護保健施設サービス4.3%-など。
厚生労働省は、2024年度の介護報酬改定で創設した「介護職員等処遇改善加算」に関する要件の弾力化を盛り込んだ通知を都道府県などに出した。職場環境改善の要件に関する取り組みを事業者が25年度中に行うと処遇改善計画書で誓約すれば、その要件を満たしていると見なしても差し支えないとした。誓約した事業者は26年3月末までに関連の取り組みを行い、実績報告書でそのことを報告しなければならない。
厚生労働省はこのほど、2024年8月の「介護保険事業状況報告の概要(暫定版)」を公表した。詳細は以下の通り。
千葉県東金市で65年にわたり、地域住民の健康・福祉を支え続けてきた浅井ヘルスケアグループ。そのグループの一員である社会福祉法人ゆりの木会が運営する介護施設「ゆりの木苑」は、長年地域に寄り添い、地域とともに歩んできた。そんな同施設の日常を紹介する。
厚生労働省は、2024年度の補正予算を活用した「介護テクノロジー導入・協働化等支援事業」について25年度中にケアプランデータ連携システムの利用を開始することを事業所の要件とすると都道府県などに周知した。
>>その他サービスを見る
早期資金化!介護報酬ファクタリングサービスで解決!現行の介護保険制度では、国民健康保険団体連合会(国保連)から介護報酬を受け取るまでに約2ヶ月かかり、その間に発生する人件費など資金が必要になります。リコーリースの「介護報酬ファクタリングサービス」を利用すれば、通常より1.5ヶ月も早く資金化することができます。
ご利用者様の預金口座から利用料金を口座振替いたします。弊社の口座振替ネットワークを利用して、電気料金などの公共料金と同じように、ご利用者様の預金口座から利用料を口座振替するシステムです。振替日は4日、20日、27日をご用意しております。
車両リースは、資金の効率的な活用を実現し、メンテナンスなど煩雑な管理業務もアウトソーシングできるため多くの企業に採用されています。一般的に車両リースを大別すると、ファイナンスリースとメンテナンスリースに分類することが出来ます。
商圏分析サービスとは、これからデイサービスの開業をお考えの方、既にデイサービスを開業しており増店をお考えの方へ出店したい地域の情報を提供させていただくサービスです。簡易版では、出店したい地域の商圏内における3種類のレポートを「けあコンシェル」会員様限定で無料にて提供いたします。
利厚生の充実は、優秀な人材確保の切り札です。アウトソーシングサービスを活用することで、豊富で充実したメニューを従業員やそのご家族の皆様へ提供でき、満足度を向上することができます。