
介護サービス品質の向上のために欠かせない「アウトカム指標」とは?

介護保険制度は3年に1度、基本報酬や加算・減算に関する改定が行われます。そして、2021年の介護報酬改定に向けた議論は、すでに始まっています。そこで重要なテーマになるのが、介護サービスの正しい評価基準、指標です。この記事では、介護サービスを評価する方法として、「アウトカム指標」を詳しく解説します。
アウトカム指標
1.介護サービスの指標について
3つの指標によって介護サービスは評価されます。下記にその3つを紹介します。
1-1.ストラクチャー指標
施設や事業所の物的資源(設備)、人的資源(体制)に対して用いられる指標です。具体的には、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、老健施設、介護医療院といった「サービス提供事業所数」がチェックされます。次に、「サービス種類別」の定員数もストラクチャー指標ではチェックされます。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など、専門的なスキルを有した従事者がどれだけいるかが基準です。そのほか、「サービス提供事業所数」もストラクチャー指標の一部です。ここでは、老健施設、介護医療院といった「短期入所療養介護」が対象です。
1-2.プロセス指標
利用した人数など、介護サービスの充実度を表すための指標です。例えば、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、老健施設、介護医療院などの「利用率」は大きなポイントでしょう。通所リハビリテーションについては、「定員あたりの利用延人員数」もチェックされます。さらに、リハビリテーションマネジメント加算II以上の算定者数もプロセス指標には含まれます。
短期集中(個別)リハビリテーション算定者数や認知症短期集中リハ算定者数も重要です。これらの介護を行っていく体制が整っているかどうかが、評価を左右します。短期集中(個別)リハビリテーション実施加算の算定者数や生活機能向上連携加算の件数算定者数など、施設内部だけでなく外部と連携して行うリハビリテーションも指標には含まれています。そして、経口維持加算の算定者数では、多職種での経口を維持する取り組みが評価されてきました。
1-3.アウトカム指標
高齢化社会に対応するため、2006年度の「介護予防サービス」から加わった指標です。アウトカム指標では、高齢者や要介護(支援)認定者の状態像に関する特長、変化をチェックします。例えば、要介護度の維持、改善を評価する「事業所評価加算」は、代表的なポイントでしょう。次に、施設から在宅復帰したケースも高く評価されます。この評価を「在宅復帰・在宅療養支援機能加算」と呼びます。
リハビリテーションにより、社会参加が実現することも大きな評価対象です。「社会参加支援加算」はアウトカム指標ならではの視点だといえるでしょう。そのほか、ADLの維持・改善となった利用者もアウトカム指標ではチェックされます。「ADL維持等加算」は施設独自の取り組みを受け入れる指標の1つです。
2.アウトカム指標の必要性について
2020年現在、介護サービスではストラクチャー指標とプロセス指標が重要視されています。しかし、これらの指標だけだと「事業者が労力と時間をかけること」自体を良しとしてしまいます。それによってサービスの質が高まったり利用者の状態が改善したりしても、インセンティブに変化はありません。いわば、介護の成果ではなく、労働時間によって評価が決まってしまうのです。こうした問題を解決するため、アウトカム指標に注目が集まっています。
2-1.アウトカム指標の推進派の意見(メリット・期待)
「成果ベース」によって事業者を評価できるのは大きなメリットです。例えば、アウトカム指標の一部である「在宅復帰」は、従事者の労働時間と比例するポイントではありません。質の高いサービスを効率的に実施すれば、短期間で復帰できることもあります。アウトカム指標では、こうした真の意味でのサービスの質を評価しやすくなっています。
そして、アウトカム指標が重要視されるようになれば、より効率的なサービス提供のために介護施設は、努力をし始めると考えられます。そうすれば、労働時間ではなく、純粋な品質向上へのアプローチが加速化するでしょう。こうした考え方は、介護施設での労働環境改善にもつながっていきます。要介護者はもちろん、従事者の生活と健康を守る上でも、アウトカム指標は大事です。
2-2.アウトカム指標の慎重派の意見(デメリット・課題)
クリームスキミング問題は、アウトカム指標の大きな課題でしょう。すなわち、事業者がアウトカムの改善に関係する高齢者のみを選ぶようになる危険性です。事業者からすれば、症状の回復する見込みが薄い高齢者を受け入れても、アウトカム指標に影響はありません。そのため、症状が比較的軽い高齢者が優先的にサービスを受けられるという、矛盾が起こりかねないのです。また、「要介護認定率の変化」など、アウトカム指標にあてはまらない加算基準を見直すなど、評価設定に関する問題も出てきます。アウトカム指標を新たに導入するには、中長期的に施設の体制を変えていく姿勢が必要です。
今後の展望と期待
アウトカム指標による介護サービスの評価を正しく実施するには、介護関連データベースで収集した情報を利用しましょう。その上で、施設の取り組みと成果をデータ分析し、エビデンスを集めていくことが大事です。アウトカム指標で施設が正当に評価されるようになれば、無駄な労力を割かずに、サービスの質は向上していくでしょう。
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