ニーズが高まるグループホーム!経営のための基礎知識と今後の課題
高齢化社会が進むにつれて、介護事業に対するニーズも多様化してきています。その中のひとつに認知症の高齢者が安心して暮らせる施設というのがあります。日本人の寿命が延びるにつれて認知症を患う人の数も増えており、そうした方を受け入れる施設として通常の老人ホームでは十分とは言い難いというのが現実です。そこで、注目されているのが、グループホームの存在です。一体、グループホームは老人ホームとは何が違い、経営を行うにはどのようなことに気をつければよいかなどについて解説をしていきます。
グループホームの在り方と介護保険制度
グループホームが通常の老人ホームと異なるのは、入居者が認知症と診断された高齢者に限定されている点です。しかも、少人数で共同生活を送るために、家庭での介護は困難が伴うけれど、身の回りのことは概ね自分で出来るという中程度の認知症高齢者が対象となります。したがって、暴力的な傾向が強かったり、自傷行為を繰り返したりして共同生活が困難な場合は入居を断られる場合があります。グループホームは、介護職員の助けを得ながらも、なるべく一般家庭に近い雰囲気で日常生活を過ごすことにより、症状の改善や進行の予防を図る施設です。認知症高齢者受け入れ施設ではなく、一種のリハビリ施設だと考えてください。
また、家庭的な雰囲気を何より大切にし、プライベートの空間も確保することで認知症高齢者の尊厳を重んじるのもグループホームの特徴だと言えるでしょう。介護保険制度に関しては、医師の診断で認知症であると確認され、要介護1以上ならば保険給付の対象となります。
ただし、介護保険適用となるのは全国一律で費用が決まっている介護サービス費とそれに伴う加算費のみで、家賃、食費、光熱費などの生活費は保険適用外です。介護サービス費は介護レベルが高いほど高額になり、負担割合は利用者の所得額に応じて1割もしくは2割となっています。そして、それらをすべて含めた支払い額は、施設によっても異なりますが、おおよそ月々20万円前後というのがひとつの目安となります。
グループホームの人員基準と設備基準とは
グループホームではひとつの住居を1ユニットとして数え、そこに入居する認知症高齢者は9人以下と定められています。これは、認知症の方は多人数とコミュニケーションを図るのが困難なためです。そして、スタッフの人数ですが、人員基準では入居者3人に対して1人以上の介護職員を配置することとなっています。例えば、入居者が9人ならば介護職員は3人以上必要です。ただ、午後6時~午前6時の夜間に限っては、入居者の人数に関係なく1名以上配置となっています。この時、職員は通常勤務を行う必要があり、宿直勤務としての配置しかなされていない場合は、人員基準違反となるので気をつけてください。
またその他に、住居ごとに常勤管理者と計画作成担当者の配置が必要です。両者は厚生労働省指定の研修を受講する必要があり、常勤管理者になるには、さらに認知症介護の経験が3年以上なければなりません。なお、このふたつの役職は入居者の介護に支障がでない場合においては、兼任が認められています。
そして、介護業務か介護事業に従事し、厚生労働省指定の研修を受講した者が事業の代表者となる必要があります。次に設備基準ですが、ひとつの事業所における共同生活住居は最大2ユニットまでです。住居は定員5人以上9人以下で、自室、リビング、キッチン、食堂、浴室、面談室、事務室などの入居者が生活と営み、職員が業務を行うための十分な設備を備えていなければなりません。
ただ、リビングと食堂は兼用でも大丈夫です。個室は4.5畳以上のものを一人につきひと部屋ずつ用意します(夫婦の場合はふたりで1部屋でも可)。また、自室には廊下、リビング、食堂といった共用スペースに直接つながっている出入り口が必要です。
グループホーム経営のトレンドと将来ニーズ
介護施設を経営していく上で、大きな課題のひとつが人件費です。人員基準では入居者に3人につき介護職員ひとりを配置すればよいことになっていますが、これだけの人数では介護の手が行き届かない場合が多々あります。中には入居者ふたりに対してひとりの職員配置を基準にしている施設もあるくらいです。
しかし、そうなると人件費によって経営が圧迫され、赤字の原因となります。そこで最近増えているのは、2つの住居を同時に管理する2ユニット経営です。これならば職責の兼任が認められているため、人員配置を工夫することで人件費を抑えられます。
さらに最近では、看護師の24時間体制を導入する施設が増えています。入居者の高齢化のために医療措置が必要なケースが増大しているからです。24時間看護師を配置すれば、それこそ人件費の高騰につながるのではと思うかもしれませんが、24時間体制というのは看護師が24時間勤務しているのと違います。看護師と24時間連絡が取れればいいのです。例えば、昼間は職員の看護師が対応し、夜間は訪問看護サービスに業務委託して医療連携加算がつく体制を整えれば経営者側の負担は軽くすみます。
認知症を伴う高齢者の数は増加する一方で、グループホームのニーズはますます高まっています。将来においてもその需要が減ることはまずないでしょう。しかしその一方で、入居者の高齢化が顕著につれて医療措置が必要となった方の退去をお願いするケースが増えており、大きな問題になっています。グループホームは医療施設ではないのでしょうがないとはいえ、追い出すような形になっては悪い噂が広がりかねません。それを避けるためにもこれからのグループホーム経営には、看護師の配置などを含め、いかに充実した医療体制を敷くかが課題となってきます。
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