2018年の介護報酬と診療報酬のW改定に備えて考えておきたいこと
団塊の世代が全員75歳を迎える2025年に向けて、介護業界では日々慌ただしい活動が続いています。企業の利益と社会福祉の理念の共存、介護の人手不足と外国人労働者の問題、それに慢性的な財政危機など、業界を取り巻く環境には問題が山積で、なにから手をつければいいのかわからないほどです。そんな状況下で、2018年には大きなイベントが待ち構えています。介護報酬と診療報酬のW改定です。W改定で予測されること、今からできることをあらかじめ考えておくことで、来たるべき大きな変化に備えておきましょう。
2018年は介護報酬と診療報酬のW改定の年
介護報酬改定は3年に1度、診療報酬は2年に1度の改定が基本です。6年に1度は、介護と医療のW改定が行われることになります。前回のW改定は2012年、このときには新たなサービスとして、24時間対応の定期巡回・随時対応型訪問介護看護と、小規模多機能型居宅介護と訪問看護を組み合わせた複合型サービスが作られました。2012年の改正時のポイントは「施設から在宅へ」と、「自立支援型サービスの強化」といえるでしょう。現在、各地で進められている地域包括ケアシステム構想も、このときに提起されています。
前述の2つのキーワードのうち、「自立支援型サービスの強化」が少しわかりにくいかもしれません。わかりやすくいいかえると「最後まで自宅で暮らせる介護環境を作ろう」ということです。骨折や肺炎などで入院して機能低下したとしても、その後のリハビリによって自宅に戻ることを推進する試みです。これによって、リハビリの提供体制の充実や、訪問介護の生活援助の時間区分の見直しがなされました。前回のW改定から6年、今回の改定もこの流れに沿って進められることは、まず間違いないと考えられます。
影響を受けるのは要介護1と2?予想される介護報酬改定
2016年現在、報酬改定の内容が具体的に決まっているわけではありません。しかしながら、多くの識者の共通認識として、2018年の介護報酬改定は「厳しい」ものになる、と予想されます。「厳しい」の程度は人によってまちまちですが、現在の社会保障費の増大と今後の人口予測を考えた場合、介護報酬のマイナス改定はほぼ間違いないといえるでしょう。事業所にとって苦しい台所事情が続きますが、厳しい改定となるのは事業所にとってだけではありません。介護保険サービスを利用している高齢者にとっても、これまでのように十分なサービスを受けられなくなる恐れがあります。
現在の介護報酬改定の流れは、軽度の要介護者は介護保険外でみて、重度の要介護者に介護保険サービスを集中させようとしています。限られた労力を、より介護を必要な人のところに注力する。間違ってはいませんが、言い方を変えるとそれは、軽度要介護者の切り捨てに他なりません。
今回の改定でいきなり要介護1、2の人が介護保険サービスを利用できなくなることは考えにくいですが、単位数の減少や、利用できるサービスの制限は十分に考えられます。要支援の人にとっては、より厳しい状況が待ち受けています。今回の改定でもっとも影響を受けるのが、介護認定によって自立~要支援1、2と認定された人々であることは間違いないでしょう。これらの人々の介護保険サービス利用を制限し、地域包括ケアや総合事業によって不足分を補おうというのが、国の考えている戦略だと考えられます。
重要視される地域での介護と医療の連携!乗り越えるべきハードルは?
軽度要介護者が介護保険サービスを利用できなくなる流れは、もう押しとどめることができないのかもしれません。となると、大事になってくるのが、各自治体による地域包括ケアシステムの推進と充実です。各自治体の行政が積極的に動いて地域住民の理解を得て、地域に眠っている活力を積極的に掘り起こし活用することで、介護保険から漏れた人々の受け皿を作ることが求められています。これは、自立した人が軽度の要介護者をみる、一方的なケアシステムではありません。軽度の要介護者が自立を果たし、自分たちでより介護が必要な人を見ていく、高齢者同士の互助システムの構築が不可欠です。
こうした環境を作り上げるためには、長年の働きかけが欠かせません。現在ほかの地域に先駆けて、地域包括ケアを進めている地域でも、その取り組みは10年以上前から始められているものがほとんどです。地域住民だけでなく、介護施設や医療施設との連携も求められます。入院期間を短期間にする代わりに、自宅から通院できるための環境づくりや、一時的な介護施設での受け入れなど、地域にある事業所同士の交流と協力がなければ、地域包括ケアシステムの実現は覚束ないでしょう。
2018年のW改定以降、介護と医療、そして行政間の密な連携が、今まで以上に大きな鍵を握ることになりそうです。地域格差が生まれるかどうかも、ひとえにこの点にかかっているといえるのではないでしょうか。
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島根県安来市で、40余年にわたって地域の児童福祉・高齢者福祉を支え続けている社会福祉法人やすぎ福祉会が運営する特別養護老人ホーム「しらさぎ苑」。同施設が実践するハートフルな個別ケアは、入所者一人ひとりが“主役”になれる。
居宅介護支援事業所と地域包括支援センターによる主任ケアマネジャーの確保が困難な地域があるとして、厚生労働省は2日、それらでの兼務を認める中間整理案を「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」に示した(参照)。しかし、検討会の構成員からは、双方の主任ケアマネの役割は異なり、兼務には大きな負担が生じるなどと反対意見や慎重論が相次いだ。
厚生労働省は、介護分野のさらなる賃上げを支援するため2024年度の補正予算案で806億円を盛り込んだ。生産性を向上して業務効率化や職場環境の改善を図り、人材確保・定着に向けた基盤を構築する介護施設や事業所に対し、常勤職員1人当たり5.4万円相当の一時金を支払えるよう補助金を支給する。
厚生労働省は10月30日の社会保障審議会・医療部会に、医療法に新たにオンライン診療に関する規定を設けることを提案し、大筋で了承された。今後も部会での議論を続け、2025年の通常国会への法案提出を目指す。
財政制度等審議会は11月29日にまとめた「秋の建議」で、要介護1・2の軽度者への訪問介護・通所介護について市町村が運営する地域支援事業に移すべきだと提言した。介護サービスの需要の大幅な増加が今後見込まれるとともに、介護の人材や財源に限りがある中で、要介護者のうち専門的なサービスをより必要とする重度者に対し給付を重点化していく必要があると主張している。
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